エクセルで需要予測はできる?代表的な計算式から関数の使い方、AIの組み合わせについて解説
需要予測は、在庫の最適化や欠品防止に欠かせない業務です。専用ツールを導入する前に、まずエクセルで手軽に始めたいと考える企業は多いのではないでしょうか。エクセルにはFORECAST関数やTREND関数、予測シート機能など、需要予測に活用できる機能が標準搭載されており、追加コストなしで導入できる点が大きな利点です。
本記事では、需要予測に用いられる代表的な計算式から、エクセル関数の具体的な使い方・予測シートの操作手順・予測をおこなう際の注意点、さらにエクセルの限界を超える手段まで解説します。 需要予測の実践を検討している方はぜひ参考にしてください。
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需要予測とは?
需要予測とは、過去の販売実績データや市場トレンド・季節変動・外的要因などをもとに、将来の需要量を事前に推計する業務です。適切な在庫量の維持・発注タイミングの最適化・生産計画の立案など、サプライチェーン全体の意思決定を支える基盤となります。
需要予測の精度が高ければ、欠品による機会損失と過剰在庫による廃棄ロス・保管コストの増大を同時に抑制できます。一方、予測精度が低いままでは、担当者の経験と勘に頼った発注が続き、在庫管理の属人化と非効率が慢性化します。
需要予測の手法には、移動平均法・指数平滑法・回帰分析など複数のアプローチがあり、それぞれデータの特性や用途によって使い分けることが重要です。 エクセルはこれらの手法の多くを関数や組み込み機能で実行できるため、専用ツールを導入する前の第一歩として広く活用されています。
エクセル関数を使った需要予測のやり方
エクセルには、需要予測に活用できる関数が複数標準搭載されています。それぞれ予測の仕組みと適した用途が異なるため、自社のデータ特性に合った関数を選ぶことが精度向上の前提となります。ここでは、代表的な4つの関数を解説します。
- FORECAST関数(FORECAST.LINEAR関数)
- FORECAST.ETS関数
- TREND関数とSLOPE関数
FORECAST関数(FORECAST.LINEAR関数)
FORECAST関数(Excel 2016以降ではFORECAST.LINEAR関数)は、既知のxとyの値から線形回帰モデルを作成し、指定したxの値に対応する将来の数値をひとつ予測する関数です。「年度」と「売上」のように1対1の関係で予測する単回帰分析に適しています。
書式は =FORECAST(x, 既知のy, 既知のx) となります。たとえば、過去6ヶ月の月別売上データをもとに翌月の売上を予測する場合、xに翌月の月番号、既知のyに過去の売上実績、既知のxに対応する月番号を指定します。
直線的なトレンドが続くデータに対しては高い予測精度を発揮しますが、季節変動や急激な需要変動が含まれるデータには向かない点に注意が必要です。 シンプルな構造のため、需要予測に初めて取り組む際の入門的な関数として活用しやすいのが特徴です。
FORECAST.ETS関数
FORECAST.ETS関数は、指数平滑法(Exponential Smoothing)をベースに、季節変動(周期性)を考慮して将来の値を予測する関数です。Excel 2016以降で利用可能で、季節性のある販売データに対してFORECAST.LINEAR関数より高い予測精度を発揮します。
書式は =FORECAST.ETS(目標日付, 値, タイムライン, 季節性, データ完成, 集計) です。季節性の引数に「1」を指定すると自動検出、数値を直接指定すると任意の周期を設定できます。また、欠損値の補間にも自動で対応するため、データに抜けがある場合でも利用しやすい点が利点です。
月次・週次の販売データに季節変動が含まれる小売業や食品業では、FORECAST関数よりもFORECAST.ETS関数を優先的に検討することをおすすめします。 周期性のあるパターンを捉えることで、繁閑差の大きい需要をより正確に予測できます。
TREND関数とSLOPE関数
TREND関数は、複数の将来値を配列として一度に出力できる点がFORECAST関数との大きな違いです。複数の予測期間分の結果をまとめて算出したい場合や、複数の説明変数(気温・曜日・販促フラグなど)を用いた重回帰分析に応用したい場合に有効です。
書式は =TREND(既知のy, 既知のx, 新しいx, 定数) となります。複数月先の予測値を一括で算出したい際には、配列数式として入力することで効率的に結果を得られます。
一方、SLOPE関数は回帰直線の傾き(単位期間あたりの平均的な変化量)を求める関数です。SLOPE関数で求めた傾きを使って「直近の実績値+傾き×予測期間数」という計算式を組み立てることで、シンプルな次期予測ロジックをエクセル上で構築できます。 関数の仕組みを理解しながら予測モデルを自作したい場合に役立ちます。
関数不要で簡単!エクセルの「予測シート」機能の使い方
エクセルには、関数の知識がなくても需要予測グラフを自動生成できる「予測シート」機能が搭載されています。視覚的に予測結果を確認しながら設定を調整できるため、初めて需要予測に取り組む現場担当者にも使いやすい機能です。ここでは、概要と具体的な手順を解説します。
- 予測シート機能の概要とメリット
- 予測シートの作成手順とオプション設定
予測シート機能の概要とメリット
予測シート機能は、Excel 2016以降に搭載された機能で、時系列データと実績値を選択するだけで将来の予測値と折れ線グラフを自動生成します。内部ではFORECAST.ETS関数と同様のアルゴリズムが使われており、季節変動を考慮した予測が自動でおこなわれます。
関数を手動で記述する必要がないため、統計の知識が乏しい担当者でも視覚的に予測結果を確認しながら活用できる点が最大のメリットです。 予測値だけでなく上限・下限の信頼区間も同時に表示されるため、予測のばらつき幅を把握しながら発注計画を立てることができます。
複雑な設定なしにグラフ付きの予測結果を短時間で確認できるため、経営層への説明資料や社内会議での共有にも活用しやすい機能です。
予測シートの作成手順とオプション設定
予測シートの作成は3つのステップで完了します。まず日付列と売上(数量)列のデータ範囲を選択し、次に「データ」タブから「予測シート」をクリックします。表示されたダイアログで予測終了日を指定し、「作成」ボタンをクリックすることで、予測値と信頼区間を含む折れ線グラフが自動生成されます。
オプション設定では、季節性の自動検出のほか、手動で季節周期を指定することもできます。信頼区間の範囲(既定95%)を変更することで予測の幅を調整でき、より保守的な在庫計画を立てたい場合は信頼区間を広げる設定が有効です。 また、欠損値の補間方法(補間する・ゼロに設定する)も選択できるため、データに抜けがある場合でも柔軟に対応できます。
エクセルで需要予測をおこなう際の注意点
エクセルを使った需要予測は手軽に始められる一方で、精度を高めるためにはいくつかの重要な注意点があります。こうした点を把握しておくことで、予測結果を正しく活用できるようになります。
- 過去データの量と質が予測精度を左右する
- 予測と実績の比較による精度検証が不可欠
- 外的要因や大量SKUへの対応にはエクセルの限界がある
過去データの量と質が予測精度を左右する
統計的な需要予測は、十分な量の過去データがあってはじめて精度が安定します。データが少ない場合、回帰モデルがノイズに過剰適応し、実際の需要変動を正確に捉えられなくなります。一般的には、季節性を考慮する場合は少なくとも2〜3年分の月次データが望ましいです。
また、データの質にも注意が必要です。欠損値(空白期間)や外れ値(異常に高い・低い値)がデータに含まれている場合、予測精度が著しく低下します。 欠損値の補完方法(前後の平均値で補う・ゼロとして扱うなど)と外れ値の処理ルールをあらかじめ決めておくことが、データ整備の基本です。
予測精度を高めるための第一歩は、関数の選び方よりも、入力データの整備と品質管理にあると認識しておくことが重要です。
予測と実績の比較による精度検証が不可欠
需要予測をエクセルで算出した後、その結果を発注に使い続けるだけでは不十分です。予測値と実際の需要実績を定期的に比較し、どの程度の誤差が生じているかを評価するPDCAサイクルを回すことが、精度の継続的な向上に欠かせません。
精度評価には、MAPE(平均絶対パーセント誤差)という指標がよく使われます。MAPEは |実績値-予測値|÷実績値×100 の平均値で算出され、値が小さいほど予測精度が高いことを示します。MAPEが高い商品や期間に対しては、使用する関数や季節性パラメータを見直すなどの改善をおこなうことで、予測モデルの精度を段階的に高めることができます。
計算して終わりにせず、精度検証と改善を継続することが、エクセル需要予測を実務で機能させるためのポイントです。
外的要因や大量SKUへの対応にはエクセルの限界がある
エクセルの関数は、過去データのトレンドや季節性を捉えることは得意ですが、天候・SNSトレンド・競合動向・突発的なイベントといった非線形な外的要因を変数として組み込むには、高度なモデル設計が必要となり、一般的なエクセル運用の範囲を超えてしまいます。
また、取り扱いアイテム数(SKU数)が多い小売業では、商品ごとにエクセルで予測シートや関数を管理する作業が膨大になります。ファイルの肥大化による動作の重さ、担当者ごとの管理方法のバラつき、更新漏れによるデータの陳腐化といった問題が積み重なり、エクセル管理そのものが業務の負担になるケースも少なくありません。
こうした限界を感じ始めたタイミングが、より高度なツールへの移行を検討するサインといえます。
エクセルの限界を超えるならAI需要予測という選択肢
エクセルで対応しきれない複雑な需要予測ニーズには、AI需要予測ツールの活用が有効です。自社の課題規模と照らし合わせながら、移行を検討するタイミングの参考にしてください。ここでは、AI需要予測でできることと、自動発注との組み合わせについて解説します。
- AI需要予測ツールでできること
- AI需要予測と自動発注の組み合わせも可能
AI需要予測ツールでできること
AI需要予測ツールは、過去の販売データに加え、天候・曜日・祝日・地域イベント・プロモーション情報といった外的要因を自動で分析し、SKUごとに高精度な需要予測を算出します。エクセル関数では処理が困難だった複数の変数の相互作用を、機械学習モデルが自動で学習・反映します。
大量SKUを抱える小売業でも、全商品の予測を一括処理できるため、エクセルで商品ごとに管理していた際の工数と管理ミスを大幅に削減できます。 また、新商品や販売実績が少ない商品に対しても、類似商品のデータや属性情報を活用した予測が可能なモデルも存在します。
AI需要予測と自動発注の組み合わせも可能
AI需要予測ツールは、予測結果をそのまま発注量に反映する自動発注システムと組み合わせることで、さらに大きな効果を発揮します。予測→発注量算出→発注書生成という一連のプロセスが自動化されることで、担当者が毎日おこなっていた発注判断の工数を大幅に削減できます。
こうした仕組みにより、欠品率の低減・廃棄ロスの削減・発注業務の属人化解消を同時に実現することが可能です。特に日配品・生鮮食品・季節商品など需要変動が大きい商材を扱う小売業では、自動発注との組み合わせによる効果が顕著に現れます。 小売業向けのAI需要予測・自動発注サービスについては、B-Luckの公式サイトもあわせてご参照ください。
まとめ
エクセルはFORECAST関数・TREND関数・予測シート機能などを活用することで、追加コストなしに需要予測を始められる有用なツールです。関数の使い分けとデータ整備を適切におこなうことで、中小規模のSKU管理や社内共有用の予測資料としては十分な精度を発揮します。
一方、予測精度を高め続けるにはデータ品質の管理と精度検証のPDCAが欠かせません。外的要因の取り込みや大量SKUへの対応については、エクセルだけでは限界があることも認識しておく必要があります。
より高精度な需要予測と発注業務の自動化を目指す段階になれば、AI需要予測型の自動発注システムへの移行を検討することが、業務効率と在庫最適化の両面で大きな効果をもたらします。
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