小売DXや店舗DXが推進される中、あらゆる情報がデータ化され、業務に利活用されています。そうした中、特に顧客情報管理のデジタル化は小売業や卸売業にとって重要な価値を生むと考えられます。今回は、顧客情報管理のデジタル化がビジネスに与える影響やメリット、顧客情報管理のデジタル化の実装ステップやよくある課題への解決策をご紹介します。
顧客情報を管理する重要性
顧客情報は、顧客の個人情報だけでなく、コミュニケーションの記録や取引履歴などさまざまな情報を指しますが、これらの情報を管理する重要性については以下の3つを解説します。
会社の資産として蓄積できる
顧客の名前や電話番号だけでなく、取引履歴や購買記録なども顧客情報にあたるため、企業には日々顧客情報が蓄積されていき、しっかり管理を行うことで膨大な量の資産を蓄積できます。顧客情報は通常は関係する部署のみで活用されたりしますが、適切に顧客情報を管理することで、部署を横断した活用なども可能になります。
引継ぎへの活用
部署移動などで担当者が変更になる場合にも、顧客情報がしっかり管理されていることで引継ぎ時の情報の散乱がなくなりスムーズな把握が可能になります。
顧客の囲いこみができる
保有している顧客情報を活用することで顧客の囲い込みも可能になります。
蓄積された取引履歴や購買履歴などの顧客情報を分析することで、顧客の購買行動や嗜好性などを把握し顧客の求めるものを適切なタイミングで提供することもできます。そうすることで顧客を囲い込み長期的な関係の構築にもつながります。
顧客情報管理のデジタル化とは?
近年は、急速なオンライン化により顧客の購買がECへとシフトしており、小売業・卸売業においては店舗運営とECの両方をあわせて管理する必要性が生まれています。このことを背景に、デジタル化の重要性が増しています。そうした中、重要になってくるのが顧客情報管理のデジタル化です。
顧客情報管理のデジタル化とは?
顧客情報デジタル化とは、顧客情報を主に購買工程やマーケティングのコミュニケーションなどの際、デジタル形式で入手した情報を保存管理することを指します。従来の手書きといったアナログによる管理と対照的な管理を表します。
顧客情報管理のデジタル化がビジネスに与える影響
顧客情報管理のデジタル化がビジネスに与える影響は大きいものといえます。
・効率化・生産性向上
一般的に、デジタル化には効率化と生産性向上に寄与すると考えられています。これまで手作業で管理していたものがデータで入力・管理することができるようになれば、業務としての効率化やスピード化をもたらし、その積み重ねが生産性向上につながります。
・顧客満足度の向上
顧客情報管理のデジタル化によってデータの利活用が進めば、顧客サービスの拡充や新しい顧客体験の提供などにより、顧客満足度が向上します。
・競争力強化
生産性向上や顧客満足向上の一連の効果は、企業の競争力を向上させることにつながります。
・リスク管理の強化
顧客情報管理のデジタル化は、すなわちセキュリティ面および顧客対応の面でリスク対応が強化されます。強固なセキュリティによって顧客情報が守られ、顧客からの問い合わせに対して、迅速にデータ参照の下で案内ができれば問題発生のリスクを回避できます。
これらは大まかな影響ですが、顧客情報管理のデジタル化は、ビジネスに大きな好影響を与えることは間違いないでしょう。
顧客情報管理のデジタル化のメリット
小売業や卸売業における顧客情報管理のデジタル化は、具体的には次のようなメリットが得られると考えられます。
データアクセスの迅速化につながる
顧客の年代・性別・住所、指名、顔情報、購買履歴などの顧客情報(※)をデジタル化することで、データアクセスの迅速化につながります。これにより、顧客データ分析の迅速化にも寄与します。
※個人情報については適切な管理や取り扱い方法を想定しています。
顧客の行動分析と市場の洞察が進む
顧客のデジタルデータを活用することで、顧客の行動分析と市場の洞察が進みやすくなると考えられます。これにより、市場競争において優位な戦略を立てやすくなるでしょう。
パーソナライズされたマーケティング戦略に役立てられる
顧客情報管理のデジタル化により、顧客の嗜好などを推測できるようになれば、パーソナライズドされたマーケティング戦略に役立てられます。例えば購買履歴に応じておすすめの商品を案内するなど、一人一人に最適なコミュニケーションが可能になります。
コスト削減につながる
顧客情報管理のデジタル化は、入力作業の削減などによる自動化がもたらす作業効率化や、顧客情報の充実と適切な分析により、顧客サービスを良好なものにしやすいメリットが得られます。これらの結果、リソース面のコスト削減につながります。
顧客情報管理のデジタル化の実装ステップ
顧客情報管理のデジタル化は、次の流れで実装していくのが一般的です。
1. 社内データの洗い出し
デジタル化に当たっては、データの収集と統合が必要になります。そのため、まずは社内のデータを洗い出し、どのようなデータがあり、どのように活用できるのかを把握します。
2. デジタル化の目的設定と戦略立案
デジタル化の目的を設定します。例として、顧客サービス拡充、顧客満足度向上、コスト削減などが挙げられます。目の前のデータと社外の必要なデータを目の前に、目的達成のために顧客情報管理のデジタル化の計画と戦略を立案していきます。
3. 必要なシステムと技術の選定
顧客情報を収集・管理するためのシステムと技術の選定を行います。社内外のデータを統合し、分析する基盤を整えましょう。またシステムはセキュリティ管理を徹底することが求められます。
4. スタッフのトレーニングと組織文化の変革
「人」や「組織」視点での取り組みも必要です。顧客情報を取り扱うスタッフのデータ分析やシステム操作リテラシーを高め、組織全体としてデジタル化の目的を見据えた変革を行います。
5. データセキュリティとプライバシーの保護
顧客情報の管理は特に顧客の個人情報を含むためセキュリティリスクを考えた環境構築が必要です。
6. 実装後のモニタリングと改善
実際にシステムを実装した後は、モニタリングを欠かさずに行い、問題が見つかり次第、改善を繰り返していくことが求められます。
小売業の顧客情報のデータ活用の成功例
小売業において顧客情報のデータを活用することで、成果を挙げた例をご紹介します。
課題
複数の店舗を展開していたある商業施設は、各店舗におけるポスターやチラシなどの販促コストが多くかかっており、課題となっていました。
実装
そこでCRM(顧客管理システム)を導入し、会員情報を管理する仕組みをつくりました。
効果
販促コストの削減を実現しながら、顧客は各店舗からお得な情報を受け取ることができるようになり、顧客満足度に寄与しました。顧客情報のデータをうまく活用して成果を出しています。
顧客情報管理のデジタル化におけるよくある課題と解決策
デジタル化の際には、直面する可能性のある課題があります。各課題に対する実践的な解決策をご紹介します。
プライバシーとデータ保護
顧客情報は個人情報を含むことから、データの取り扱いには注意しなければなりません。またプライバシーについても規制が強くなっていることを背景として、顧客自身のプライバシー保護の意識も高まっています。そのため、データ保護が確実に行えるシステムを導入する、適切に顧客の同意を取るといった対応が必要といえます。
データの移行と統合・データ品質と正確性
社内の既存データの品質が低く、形式がバラバラなどの整合性が取れていない状況ではデータの分析がむずかしい状況です。データの整理やクレンジングなどを行った上で統合を行うことが求められます。これにより、データ品質や正確性への対応も可能になるでしょう。
また、データ品質を高める課題に取り組むには、国際的な非営利団体 国際データマネジメント協会(Data Management Association International)の「データマネジメント知識体系ガイド(DMBOK)」に基づいて実施することが有効です。データ品質向上とデータマネジメントのPDCAを回していくことができます。
システムの選定と導入
システムの選定と導入にまつわる課題は多くあります。例えば近年多発するサイバー攻撃に対して、セキュリティが徹底的に強化された機能を持つシステムを選んでおかなければ問題は大きいものになります。
またシステム導入によって、社内からは既存のやり方を変えることに抵抗を感じる声が挙がることがあります。これに対してはシステム選定前に現場の声にも耳を傾けることが重要です。
継続的なメンテナンスとアップデート
システム導入後も、継続的なメンテナンスとアップデートが必要です。定期的なアップデートの確認はもちろんのこと、社内の利用者の声を随時聞いて、改善していくことが求められます。
まとめ
小売業や卸売業にとって重要な価値を生む顧客情報のデジタル化がビジネスに与える影響やメリット、顧客情報デジタル化の実装ステップやよくある課題への解決策をご紹介しました。顧客情報のデジタル化は、昨今のビジネスを大きく前進させてくれるでしょう。
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