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棚卸ししないとどうなる?年1回だけの棚卸しが招くリスクと正しい頻度・効率化の方法を解説

2026.02.18

棚卸しは、企業が保有する在庫の数量と状態を確認し、財務報告の正確性を保つための重要な業務です。しかし、「決算前に1回やれば十分」と考えている企業も少なくありません。棚卸しを怠ると、税務調査での指摘や利益計算の誤り、さらには顧客への欠品・誤出荷といった深刻な問題を招く可能性があります。

本記事では、製造・卸売・小売・ECなど在庫を扱う企業の経営者・在庫管理担当者を対象に、棚卸しをしないと何が起こるのか、年1回だけの棚卸しが招くリスク、業種別の適切な頻度、そして棚卸し業務を効率化する方法まで、体系的に解説します。自社の在庫管理体制を見直す際の参考にしてください。

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棚卸しとは?基本的な役割と目的

棚卸しとは、企業が保有する在庫(棚卸資産)の数量と状態を実際に確認し、帳簿上の記録と照合する作業です。棚卸資産には、商品・製品、仕掛品、原材料、貯蔵品(切手や事務用品など未使用のもの)が含まれます。

棚卸しの目的は大きく2つに分かれます。1つ目は「正確な利益の算出」であり、売上原価を確定させて売上総利益を正しく計算するために不可欠な作業です。2つ目は「在庫状況の把握」で、帳簿と実在庫の差異を発見し、不良在庫や過剰在庫の早期発見につなげることが可能となります。

また、法人税法では事業年度終了時に実地棚卸をおこなうことが義務付けられています。国税庁の基本通達(5-4-1)では「棚卸資産については各事業年度終了の時において実地棚卸しをしなければならない」と明記されており、これを怠ると税務上の問題が発生する可能性もあるでしょう。

棚卸しをしないとどうなる?

棚卸しをおこなわない、あるいは不適切な棚卸しを続けると、企業経営に深刻な影響を及ぼします。税務面でのリスクはもちろん、日々の業務や顧客対応にも支障が出るため、経営者は棚卸しの重要性を正しく理解する必要があります。

とくに注意すべきは、棚卸しを軽視した結果が複合的な問題として表面化する点です。税務調査での指摘が経営判断の誤りにつながり、最終的には顧客離れを招くケースも珍しくありません。

ここでは、棚卸しをしないことで発生する4つの主要なリスクを解説します。

  • 税務調査で脱税を疑われる
  • 利益と資金繰りの実態が見えなくなる
  • 不良在庫・滞留在庫が蓄積する
  • 顧客への誤出荷・欠品が発生する

税務調査で脱税を疑われる

棚卸しをおこなわないことは法人税法違反に該当し、税務調査で脱税を疑われる原因となります。棚卸資産の金額は利益計算に直結するため、不正確な申告は利益操作や粉飾決算の疑いを招く要因です。

税務調査では、提出された棚卸資産が売上や倉庫の状態と照らし合わせて不自然であれば、詳細な調査がおこなわれます。不正が認定された場合、追徴課税が科せられるだけでなく、悪質なケースでは重加算税の対象となることも珍しくありません。

さらに、法人税法第159条では「偽りその他不正の行為」により違反した者に対して、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金という厳しい罰則が定められています。

利益と資金繰りの実態が見えなくなる

棚卸しをしなければ、正確な売上総利益を算出できません。売上原価は「期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高」で計算されるため、期末の在庫金額が不明では利益の実態を把握することが不可能です。

この結果、帳簿上は黒字であっても実際には在庫として資金が滞留し、キャッシュフローが悪化する「黒字倒産」のリスクが高まります。在庫はお金そのものであり、回転しなければ資金繰りに直結する問題となります。

加えて、在庫の保管には倉庫賃料や管理人件費などのコストがかかります。在庫状況を把握できなければ、これらの保管コストが適正かどうかの判断もできません。

不良在庫・滞留在庫が蓄積する

定期的な棚卸しをおこなわないと、品質劣化や陳腐化した在庫が放置されることになります。とくに食品や化粧品など賞味期限・消費期限のある商品を扱う企業では、棚卸しの怠りが廃棄ロスの増大に直結します。

不良在庫は最終的に廃棄処分となり、廃棄コストが発生します。また、品質が低下した商品を値引き販売せざるを得なくなれば、利益率の低下も避けられません。

こうした問題は、棚卸しによって在庫の状態を定期的にチェックしていれば、早期に発見して対処できるものです。放置すればするほど、損失は拡大していきます。

顧客への誤出荷・欠品が発生する

帳簿上の在庫数と実際の在庫数に差異があると、顧客への誤出荷や欠品が発生しやすくなります。帳簿では在庫があることになっているのに実際には不足している場合、注文を受けても出荷できず、販売機会を逃すことになりかねません。

欠品や誤出荷は顧客からのクレームに直結し、企業への信頼低下を招く要因です。とくにBtoB取引では、1度の納品トラブルが取引停止につながるケースも少なくありません。

在庫差異の原因としては、入出庫時の記録ミス、返品処理の漏れ、紛失・盗難などが挙げられます。定期的な棚卸しがなければ、こうした差異に気づくことすらできません。

年1回の棚卸しだけでは不十分な理由

法人税法で義務付けられているのは事業年度終了時の棚卸しですが、年1回の実施だけでは在庫管理として不十分な場合が多くあります。在庫の動きが活発な企業ほど、棚卸しの頻度を上げる必要性が高まります。

年1回の棚卸しでは、問題が発生してから発覚するまでの期間が長くなり、原因究明が困難になるという大きなデメリットがあります。経営判断の遅れにもつながるため、自社の事業特性に応じた適切な頻度を検討することが重要です。

ここでは、年1回の棚卸しだけでは不十分な3つの理由を解説します。

  • 月次損益の精度が低下する
  • 在庫差異の原因特定が困難になる
  • 経営課題の発見が遅れる

月次損益の精度が低下する

年1回の棚卸しでは、月次の売上原価や粗利を正確に算出できません。月々の損益計算において在庫金額が推定値になるため、実際の利益状況と帳簿上の数字に乖離が生じやすくなります。

経営者にとって月次の損益情報は、事業計画の進捗確認や意思決定の重要な指標です。この数字が不正確であれば、利益目標の設定や達成度の評価も曖昧になってしまいます。

とくに利益率の管理が重要な業種では、月次棚卸しによって正確な粗利を把握することが経営改善の第一歩となるでしょう。

在庫差異の原因特定が困難になる

棚卸しの間隔が長くなるほど、在庫差異が発生したタイミングの特定が難しくなります。1年分の取引の中から差異の原因を探すのは非常に困難であり、結局は原因不明のまま処理せざるを得ないケースも多いのが実情です。

紛失・盗難・入出庫ミスといった問題は、発生直後であれば記憶や記録をたどって原因を特定できる可能性があります。しかし時間が経過すれば、関係者の記憶も薄れ、証拠となる書類も散逸してしまいます。

こうした原因不明の差異が蓄積すると、在庫管理全体の信頼性が損なわれ、システム上の数字を信用できなくなるという悪循環に陥ります。

経営課題の発見が遅れる

年1回の棚卸しでは、在庫の動きや傾向をリアルタイムで把握できません。どの商品が売れ筋で、どの商品が滞留しているのかといった情報が1年後にしか得られないため、適切な仕入れ判断や販売施策の立案が遅れます。

過剰在庫や欠品への対応も後手に回ります。需要が高まっている商品の欠品は機会損失を生み、逆に需要が落ちている商品の過剰在庫は廃棄リスクを高めます。

定期的な棚卸しをおこなうことで、在庫回転率の変化や季節変動のパターンを早期に把握し、先手を打った対策が可能になるでしょう。

業種別に見る適切な棚卸し頻度の目安

棚卸しの適切な頻度は、業種や取り扱う商品の特性によって異なります。商品の回転率が高い業種や、賞味期限管理が必要な業種では、より高頻度の棚卸しが求められます。

重要なのは、法定の年1回を最低ラインとしつつ、自社の事業特性に合わせて最適な頻度を設定することです。棚卸しには時間と労力がかかるため、頻度とコストのバランスを考慮した判断が必要となります。

ここでは、代表的な業種別の棚卸し頻度の目安を紹介します。

  • 小売業・飲食業:月次~週次
  • 製造業:月次~四半期ごと
  • 卸売業・物流業:月次が基本

小売業・飲食業:月次~週次

小売業や飲食業では、商品の入れ替わりが激しく、在庫状況が日々変動します。とくに飲食業では賞味期限管理が重要であり、期限切れによる廃棄ロスを防ぐためにも、月次から週次での棚卸しが推奨されます。

コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどでは、24時間営業を維持しながら棚卸しをおこなう必要があるため、循環棚卸(サイクルカウント)を採用するケースが増えています。

欠品は直接的な販売機会損失につながるため、高頻度の棚卸しによって在庫精度を維持することが、売上向上と廃棄ロス削減の両立に欠かせません。

製造業:月次~四半期ごと

製造業では、原材料・仕掛品・完成品と在庫の種類が多岐にわたります。これらを正確に把握することは原価計算の精度維持に直結するため、月次から四半期ごとの棚卸しが一般的です。

工場では棚卸しのために製造ラインを停止する必要があるケースも多く、生産計画との調整が重要となります。そのため、決算期の一斉棚卸しに加え、循環棚卸しを組み合わせて年間を通じた在庫精度を維持する企業も増加傾向にあるのが現状です。

また、部品点数が膨大な場合は重量換算法を用いるなど、効率的な棚卸し手法の選択も重要なポイントとなります。

卸売業・物流業:月次が基本

卸売業や物流業では、大量の商品を取り扱うため、在庫の正確な把握が取引先との信頼関係に直結します。帳簿在庫と実在庫の差異は出荷ミスにつながるため、月次での棚卸しを基本とする企業が多いのが現状です。

多拠点で在庫を管理する場合は、倉庫間での在庫移動も含めた一元管理が必要となります。循環棚卸しを活用し、エリアごとに計画的に棚卸しをおこなうことで、業務を止めずに在庫精度を維持できるのも特徴です。

取引先への納品精度は企業の信用力に直結するため、コストをかけてでも高頻度の棚卸しを維持する価値があります。

棚卸し業務を効率化する方法

棚卸しの頻度を上げることは在庫精度向上に有効ですが、その分だけ作業負担が増えるという課題があります。この課題を解決するには、棚卸し業務そのものを効率化する仕組みづくりが不可欠です。

近年は在庫管理のデジタル化が進み、従来の目視カウントから自動認識技術を活用した効率的な棚卸しへと移行する企業が増えています。限られた人員で高精度の棚卸しを実現するために、適切なツールと手法の導入を検討しましょう。

ここでは、棚卸し業務を効率化する3つの方法を紹介します。

  • 在庫管理システム・WMSを導入する
  • バーコード・RFIDを活用する
  • 循環棚卸(サイクルカウント)を取り入れる

在庫管理システム・WMSを導入する

在庫管理システムやWMS(倉庫管理システム)を導入することで、リアルタイムでの在庫把握が可能になります。入出庫のたびにデータが更新されるため、帳簿在庫の精度が向上し、実地棚卸しの負担を大幅に軽減できるのが特徴です。

WMSはバーコードスキャンやRFIDタグとの連携により、入出庫の検品作業を自動化する仕組みです。ヒューマンエラーを削減できるだけでなく、在庫の保管場所(ロケーション)まで一元管理できる点が大きなメリットといえます。

また、賞味期限やロット番号の管理機能を活用すれば、先入れ先出しの徹底が容易になり、廃棄ロスの削減にも貢献するでしょう。

バーコード・RFIDを活用する

ハンディターミナルによるバーコードスキャンは、目視カウントと比較して大幅な時間短縮と精度向上を実現できる手法です。さらにRFID(ICタグ)を活用すれば、複数の商品を一括で読み取ることができ、棚卸し作業時間を10分の1以下に短縮した事例も報告されています。

RFIDは非接触で読み取りが可能なため、段ボールを開けずに中身を確認したり、高い棚の商品を降ろさずにカウントしたりできるのも特徴です。作業効率の向上だけでなく、作業者の身体的負担軽減にも効果があります。

導入コストはバーコードより高くなりますが、取り扱い商品数が多い企業では費用対効果が見込めるため、長期的な視点での検討が重要です。

循環棚卸(サイクルカウント)を取り入れる

循環棚卸とは、在庫を場所や種類ごとに分け、順番に棚卸しをおこなう方法です。全ての業務を止めて一斉におこなう従来型の棚卸しと異なり、対象エリアのみの入出庫を止めるだけで実施できるため、営業を継続しながら棚卸しが可能となります。

この方法では、少人数で作業を進められるため人件費の削減につながるのが利点です。また、短いサイクルで棚卸しを繰り返すことで、在庫差異の早期発見と原因特定が容易になります。

一斉棚卸しと循環棚卸しを組み合わせ、日常は循環棚卸しで精度を維持し、決算時の一斉棚卸しを最小限に抑える運用が、多くの企業で採用されています。

まとめ

棚卸しをおこなわないと、税務調査での指摘、利益計算の誤り、不良在庫の蓄積、顧客への欠品・誤出荷といった深刻な問題を招きます。法人税法で義務付けられている年1回の棚卸しだけでは、在庫管理として不十分な場合が多く、業種に応じた適切な頻度の設定が重要です。

小売業・飲食業では月次から週次、製造業では月次から四半期ごと、卸売業・物流業では月次を基本とするなど、自社の事業特性に合わせた頻度で棚卸しを実施しましょう。棚卸しの負担軽減には、在庫管理システムの導入、バーコード・RFIDの活用、循環棚卸しの採用といった効率化施策が有効です。

在庫管理の精度向上は、経営判断の質を高め、顧客満足度の向上にもつながります。まずは自社の棚卸し体制を見直し、適切な頻度と効率的な手法の導入を検討してみてください。

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