COLUMN

フードロス対策とは?事業者ができる取り組みと成功事例を解説

2026.08.05

フードロス(食品ロス)とは、まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品のことです。国内で発生する年間約464万トンのうち、その約半分は食品の製造・流通・外食といった事業者から生まれています。廃棄コストの負担と環境への影響という点で、フードロス対策はいまや事業者の経営課題です。

記事では、事業者が自社で実践できるフードロス対策を、具体的な手法と成功事例をまじえて解説します。自社の廃棄削減に取り組む際の参考にしてください。

フードロス(事業系)とは?現状と発生の原因

フードロスとは、本来は食べられる状態でありながら廃棄される食品を指します。農林水産省と環境省の推計では、令和5年度(2023年度)の食品ロスは約464万トンで、事業系が約231万トン、家庭系が約233万トンとほぼ半分ずつでした。事業系の内訳は、食品製造業が108万トン、外食産業が66万トン、食品小売業が48万トン、食品卸売業が9万トンです。

廃棄される食品は、生産や輸送にかけた資源をそのまま無駄にし、焼却の段階でCO2も排出します。消費者庁によると、経済損失は年間約4兆円、温室効果ガスの排出量はCO2換算で年間約1,050万トンにのぼります。事業者にとっては、廃棄費用と仕入れ原価の二重の損失につながる問題です。

発生の原因は、事業者ごとの工程に応じてさまざまです。主な要因として、次のような点があげられます。

  • 需要予測のずれによる過剰な仕入れ・生産
  • 商慣行にもとづく返品や納品期限切れ
  • 規格外品の廃棄
  • 外食での食べ残し

商慣行にもとづく返品や納品期限切れの代表例として、「3分の1ルール」があります。「3分の1ルール」とは、製造日から賞味期限までを3分の1ずつに区切り、最初の区切りを納品期限とする商慣行のことです。納品期限を過ぎた商品は、まだ食べられるにもかかわらず返品されやすく、事業系ロスを生む一因として近年は見直しが進んでいます。

事業者ができるフードロス対策

フードロスを減らす取り組みは、仕入れから販売、廃棄の手前まで、事業の各工程に用意されています。まずは代表的な6つの対策を、業務の流れに沿って見ていきましょう。

  • 需要予測にもとづく発注・仕込みの最適化
  • 在庫管理と賞味期限・消費期限の徹底
  • 値引き・売り切りによる廃棄削減
  • 規格外品・余剰在庫の再活用
  • 少なめ・ハーフメニューと持ち帰りの導入
  • フードバンク・フードドライブへの寄付とリサイクル
対策 主な手法 期待できる効果
発注・仕込み 需要予測にもとづく発注量・仕込み量の調整 過剰仕入れと欠品の同時抑制
在庫・期限管理 期限の可視化と先入れ先出し 期限切れ廃棄の削減
値引き・売り切り 在庫と時間に応じた値引きの実施 売り逃しと廃棄の削減
再活用 規格外品の加工・訳あり販売・アップサイクル 廃棄コスト減と新たな収益
メニュー・提供 少なめ・ハーフ提供、持ち帰りの案内 外食での食べ残し削減
寄付・リサイクル フードバンク寄付、飼料・肥料化 廃棄量の削減と社会貢献

需要予測にもとづく発注・仕込みの最適化

フードロスを減らすために事業者ができるのは、需要予測です。過去の販売実績に、曜日や天候、地域の催事といった要因を重ねて売れ行きを見込むことで、発注量や仕込み量を適正に近づけられます。担当者の経験だけに頼っていた発注を、データで補える点が強みです。

近年は、需要予測をAIが担うツールも広がってきました。AIは気象や特売などの多くの変数をまとめて学習するため、人手ではむずかしい精度で需要を見積もり、過剰発注と欠品の両方を抑えられます。AIの具体的な活用方法や導入事例については、食品ロス削減にAIはどう活かせる?需要予測・事例・導入のポイントを解説をあわせてご覧ください。

在庫管理と賞味期限・消費期限の徹底

在庫管理は、廃棄を未然に防ぐための土台となる対策です。何がどれだけ在庫にあり、いつ期限を迎えるのかを把握できれば、期限切れによる廃棄を減らせます。紙や表計算での管理から、在庫と期限を可視化できる仕組みへの切り替えも有効です。

そもそも賞味期限はおいしく食べられる目安で、消費期限は安全に食べられる期限を指します。両者の違いをふまえ、賞味期限の商品は期限が近いものから先に売る「先入れ先出し」を徹底すれば、まだ食べられる在庫の廃棄を防げます。期限が近づいた商品を早めに把握し、値引きや売り切りへつなげる運用もあわせて検討しましょう。

値引き・売り切りによる廃棄削減

値引きは、売れ残りそうな商品を廃棄の前に売り切るための手段です。賞味期限や消費期限が近づいた商品を、時間帯や在庫量に応じて値引きすれば、廃棄せずに販売へ回せます。一律の値引きではなく、売れ行きを見ながら幅とタイミングを調整することがポイントです。

ただ、値引きの幅が大きすぎると、今度は粗利を損なうおそれがあります。売り切りと利益確保のバランスを取るには、商品ごとの売れ行きと残り時間を見ながら、最小限の値引きで売り切る工夫が有効です。近年は、値引きの判断をAIが支援するサービスも登場しています。

規格外品・余剰在庫の再活用

規格外品や余剰在庫の再活用は、廃棄を収益に変える取り組みです。形や大きさが基準に満たない野菜や果物を、加工食品やジュースの原料に回す方法が広がっています。余った食材を使った日替わりメニューや、まかないへの活用も外食では有効です。

また、製造の過程で出る端材を別の商品へ生まれ変わらせるアップサイクルも注目されています。訳あり商品として通常より安く販売したり、フードシェアリングのサービスに出品したりすれば、廃棄コストを抑えながら新たな売り先を確保できます。通販やアプリを通じた販路は、近年とくに選択肢が広がっている分野です。

少なめ・ハーフメニューと持ち帰りの導入

少なめやハーフサイズのメニューは、外食での食べ残しを減らす対策です。客が食べきれる量を選べるようにすることで、満足度を保ちながら残飯を減らせます。ご飯の量を調整できる仕組みや、小盛りの価格設定などが取り入れやすい工夫です。

加えて、食べきれなかった料理の持ち帰りに応じる店舗も増えています。持ち帰り用の容器を用意し、衛生面の注意を伝えたうえで持ち帰りをすすめれば、食べ残しをさらに抑えられます。注文時に適量を提案するなど、客とのやりとりを通じて協力を得ることも大切です。

フードバンク・フードドライブへの寄付とリサイクル

寄付は、売り物にならないが品質に問題のない食品を活かす対策です。そもそもフードバンクとは、企業から寄贈された食品を福祉施設などへ無償で届ける団体を指します。賞味期限が近い商品や包装に難のある商品を寄付すれば、廃棄を減らしながら地域貢献にもなる取り組みです。

また、どうしても廃棄となる食品は、飼料や肥料へのリサイクルで資源として活かせます。寄付やリサイクルは廃棄費用の削減に加え、環境や福祉に配慮する企業姿勢を示す取り組みとしても評価されます。寄付にあたっては食品衛生上のルールを守る必要があるため、受け入れ先とあらかじめ条件を確認しておきましょう。

事業者がフードロス対策に取り組むメリット

フードロス対策は、環境への配慮にとどまらず、事業者にメリットをもたらします。おもなメリットを3つに整理します。

  • 廃棄・仕入れコストの削減
  • ブランド価値とESG評価の向上
  • 従業員の意識向上と取引先からの信頼

フードロス対策のもっとも大きな効果がコストの削減です。廃棄される食品には、仕入れ原価と廃棄費用の両方がかかっています。ロスを減らせば、二重の負担を同時に抑えられる点が強みです。

次に、ブランド価値の面でのメリットがあります。環境や社会に配慮する姿勢は、消費者や取引先からの評価につながります。ESGを重視する投資家に向けたアピールにもなるため、資金調達の面でも見過ごせません。フードロス削減の取り組みを数値で示せれば、企業の信頼性を高める材料になります。

加えて、社内外への波及効果も見込めます。社会貢献性の高い取り組みは、従業員のやりがいや誇りにつながるものです。採用や取引先との関係づくり、地域からの信頼にも良い影響を与えていきます。

フードロス対策の成功事例

実際に成果をあげている事業者の取り組みは、自社の施策を考えるうえで参考になります。ここでは、小売・卸・再活用の3つの事例を取り上げました。

  • 小売:ライフコーポレーションの多面的な取り組み
  • 卸売:日本アクセスの4つのフェーズ
  • 再活用:中村商事のワイン搾りかすのアップサイクル

小売:ライフコーポレーションの多面的な取り組み

ライフコーポレーションは、店舗と工場の両面からフードロス削減に取り組む食品スーパーです。惣菜工場と連携したバイオガス発電施設では、毎日約10トン発生していた食品残渣を約1トンまで減らし、年間約70万キロワットを発電しています。売り切り商品にはグリーンのシールを貼り、食品ロス解消への協力を店頭で呼びかける工夫も特徴です。

まだ食べられる商品は、物流拠点や店舗と連携して地域の子ども食堂へ寄贈し、廃棄と福祉の課題に同時に向き合っています。陳列棚の手前から商品を取る「てまえどり」の推奨など、消費者を巻き込む工夫も進めています。

出典:食品ロス削減にまつわる企業の取り組み|農林水産省

卸売:日本アクセスの4つのフェーズ

日本アクセスは、メーカーと小売をつなぐ総合食品卸として、フードロス削減を4つのフェーズで整理しています。第1の「ロスを出さない」は、AIによる需要予測やDX化で発注と在庫の精度を高め、無駄の発生そのものを抑える段階です。第2の「売り切る」では、滞留した商品を自社ECサイトなどで安価に販売し、廃棄の前に売り切ります。

第3の「配る」は、NPOと協働して子ども向けの食支援に食品を届ける段階です。第4の「リサイクルする」では、廃棄せざるをえない食品を飼料や肥料へ再生し、資源として循環させています。川上と川下の双方と協力しながら、無駄を減らす一連の流れをつくっている点が参考になります。

出典:食品ロス削減にまつわる企業の取り組み|農林水産省

再活用:中村商事のワイン搾りかすのアップサイクル

中村商事は、ワインづくりで出るぶどうの搾りかす(ワインパミス)を活かす「RE-WINE」を手がけています。そもそもワインパミスとは、ワインを搾ったあとに残るぶどうの皮や種のことです。山梨県では、搾りかすが年間1万トン近く廃棄されてきましたが、これを資源ととらえ、さまざまな製品へ生まれ変わらせる取り組みです。

ジャムやダチョウの飼料、化粧品の原料など、搾りかすは複数の商品へ姿を変え、廃棄コストの削減と新たな収益を同時に生み出しています。規格外品や副産物を価値ある商品へ変えるアップサイクルは、廃棄を前提としない事業モデルの一例です。

出典:食品ロス削減にまつわる企業の取り組み|農林水産省

よくある質問

最後に、事業者からフードロス対策についてよく寄せられる質問をまとめました。取り組みを進める際の判断材料としてお役立てください。

Q. フードロスと食品ロスに違いはありますか? 

フードロスと食品ロスは、ほぼ同じ意味で使われる言葉です。「食品ロス」は行政が用いる正式な用語で、「フードロス」は英語由来の通称にあたります。本記事でも両者を同じ意味として扱っています。

Q. 事業系の食品ロスは、どこで多く発生していますか? 

事業系の食品ロスは、業種によって発生量に差があります。令和5年度の推計では、食品製造業が最も多く、外食産業、食品小売業、食品卸売業と続きます。自社の業態に近い分野の傾向を押さえておくと、対策を考える際の手がかりにしてください。

Q. 賞味期限と消費期限は、どう使い分ければよいですか? 

賞味期限と消費期限は、意味が異なります。賞味期限はおいしく食べられる目安で、消費期限は安全に食べられる期限を指します。期限の性質をふまえて、値引きや先入れ先出しの判断に活かしましょう。

Q. 中小規模の店舗でも、フードロス対策は始められますか? 

中小規模の店舗でも、フードロス対策は無理なく始められます。廃棄の多い日配品や惣菜など、効果が数値で見えやすい商品から試し、成果を確かめて範囲を広げる進め方が現実的です。近年は月額制のツールも増えており、初期投資を抑えて導入する選択肢もあります。

Q. AIはフードロス対策にどう役立ちますか? 

AIは、需要予測や値引きの最適化を通じてフードロス削減に役立ちます。過去の実績と外部データを学習し、発注量や値引き幅を高い精度で見積もることで、過剰在庫と廃棄を抑えられます。具体的な活用方法は、本記事で紹介したAI活用の解説記事をあわせてご覧ください。

まとめ

事業系の食品ロスは、廃棄コストと環境負荷の両面で、事業者が向き合うべき経営課題になっています。令和5年度の推計では、食品ロス約464万トンのうち、およそ半分が事業者から生まれていました。

対策の柱は、需要予測にもとづく発注、在庫と期限の管理、値引きによる売り切り、規格外品の再活用、そして寄付やリサイクルです。どれか一つに絞るのではなく、自社の工程に合う施策を組み合わせることで、廃棄を無理なく減らせます。取り組みはコスト削減だけでなく、ブランド価値の向上にもつながっていきます。

まずは廃棄の多い商品から着手し、効果を確かめながら対象を広げてみてください。データにもとづく発注と値引きの最適化で、廃棄の削減と利益の確保を両立する店舗運営をかなえましょう。

弊社のAI需要予測型自動発注システム「B-Luck」は、気象や曜日、特売情報などを学習して発注推奨値を自動で算出し、AI値引の機能とあわせて過剰在庫と廃棄の削減を支援します。また、「B-Luck賞味期限チェック」により、賞味期限を管理しながら売り切りに向けた早めの対応が可能となり、さらなるフードロス削減につなげられます。フードロス対策を仕組みとして定着させたい事業者の方は、ぜひご検討ください。

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