在庫適正化とは?小売店が欠品と廃棄を減らすAI活用の進め方を解説
在庫適正化とは、欠品も過剰在庫も起こさない在庫量に近づけていく取り組みです。計算式そのものは広く公開されているものの、消費期限の短い商品を扱う小売店では、式どおりに運用しても数字が合わないという声を聞きます。
売れ行きが日々変わる売場では、担当者の感覚だけで在庫量を決めるのは困難です。
本記事では、在庫適正化の考え方と適正在庫の計算方法、AIを使った進め方までを、店舗運営の責任者に向けて解説します。自社の在庫を見直す材料としてお使いください。
在庫適正化とは?適正在庫と安全在庫の違い
在庫適正化とは、欠品と過剰在庫のどちらも避けられる在庫量に近づけていく取り組みを指します。在庫の適正化のために頻出するのが以下3つの在庫です。
| 用語 | 意味 | 在庫適正化での役割 |
| 安全在庫 | 欠品を防ぐために最低限もつ在庫 | 在庫量の下限を決める |
| サイクル在庫 | 発注から次の発注までに消費される在庫の半分 | 通常の補充分を見込む |
| 適正在庫 | 欠品と過剰在庫の双方を防ぐ在庫の範囲 | 上限と下限の幅を決める |
混同されやすいのが、安全在庫と適正在庫です。安全在庫はあくまで下限であり、そこに余裕を上乗せしていくと過剰在庫に近づきます。適正在庫は利益を最大にするための範囲なので、下限だけでなく上限も決めなければなりません。
小売店で在庫適正化が難しい理由
在庫適正化の計算式は、業種を問わず使えるように整理されています。ただし小売の売場には式だけでは埋まらない事情があるため、ここでは3つの理由を整理します。
- 日配品や生鮮は1日で在庫が入れ替わる
- 欠品を恐れて安心在庫を積んでしまう
- システム上の在庫数が実態と合っていない
日配品や生鮮は1日で在庫が入れ替わる
日配品や生鮮食品は、在庫を翌日まで残せません。消費期限が1日から数日しかない商品では、売れ残った分は値引きか廃棄になり、次の日の在庫として計算に組み込めません。一般的な安全在庫の考え方は、在庫を保管して次の需要に備える前提で組み立てられています。
そのため、日配品では在庫に余裕をもたせること自体がロスに直結します。安全在庫の式をそのまま当てはめるのではなく、当日中に売り切れる量を基準に考えなければなりません。
欠品を恐れて安心在庫を積んでしまう
売り場の担当者は欠品を恐れ、安全在庫を積んでしまいがちです。万が一棚が空いてしまうと損失につながると考え、欠品しないように余分な在庫を上乗せしてしまいます。これを繰り返しているうちに、下限ではなく安心のために余計な在庫を積んでいるということです。
この際に、上乗せの根拠がきちんと記録されていなければ、なぜ上乗せが必要なのかを後から検証できません。ただ「欠品が怖い」という理由だけで安心在庫を積むのは避けるべきです。
システム上の在庫数が実態と合っていない
システム上の在庫数と、実態にずれが生じるケースもあります。値引き販売や廃棄、返品の処理が漏れていると、システム上の在庫と棚の実物がずれていきます。ずれた在庫数で計算した適正在庫は、どれほど式が正しくても実態から離れた数字です。
とくにずれが出やすいのが、店内で加工して個別のバーコードを貼る商品です。バックヤードの在庫も含め、入出庫の記録が残る運用に切り替えましょう。
適正在庫の計算方法
適正在庫を求める計算方法は1つではありません。数量で見る方法と金額で見る方法があるため、ここでは代表的な3つを紹介します。
- 安全在庫を計算して下限を決める
- 一定期間の需要数から適正在庫数を出す
- 在庫回転率と交叉比率で金額の適正値を見る
安全在庫を計算して下限を決める
適正在庫を求めるには、安全在庫の計算から始めましょう。安全在庫とは、想定より商品が多く売れた場合でも、欠品を防ぐために余分に確保しておく在庫のことです。
一定間隔で在庫を確認して発注する場合、安全在庫は以下の計算式で求めます。
安全係数×使用量の標準偏差×√(発注リードタイム+発注間隔)
安全係数とはどの程度まで欠品を防ぐかを表す数字です。たとえば、欠品の確率を5%まで抑えたいなら1.65、10%程度まで許容する場合は1.29%を目安にします。
標準偏差とは、日々の販売数が平均からどの程度ばらついているかを示す数字です。販売の変動が大きい商品ほど標準偏差が大きくなり、多めの安全在庫が必要になります。
発注のリードタイムとは、商品を発注してから入荷するまでの日数のことです。たとえば、8日ごとに発注をおこない、発注から入荷まで8日かかる場合は合計16日の変動を計算しなければなりません。
たとえば、安全係数が1.65、標準偏差が30個、発注リードタイムが8日、発注間隔が8日の場合、安全在庫は「1.65×30×√16」で198個です。この198個は通常必要な在庫とは別に、欠品を防ぐための予備として確保する数量です。
一定期間の需要数から適正在庫数を出す
安全在庫を決めたら、一定期間に必要な商品数を加えて、適正在庫数を求めます。適正在庫とは、通常の販売に必要な在庫に、欠品を防ぐための余裕を持たせた在庫数です。
計算方法はシンプルで、「一定期間の需要数+安全在庫数」で求めます。たとえば、1週間に50個売れると予測される商品で、安全在庫が20個なら、適正在庫は70個です。50個は通常の販売に必要な分、残りの20個は想定以上に売れた場合に備える分と考えるとわかりやすいでしょう。
この方法は計算が簡単なため、商品ごとの在庫数を現場で管理しやすい点がメリットです。一方、予測したほど商品が売れなければ、在庫が余ってしまう可能性があります。
そのため、需要数を一度決めたままにするのではなく、定期的な見直しが必要です。前年の同時期や直近数か月の販売実績を確認し、季節や売れ行きの変化に合わせて需要数を調整しましょう。
在庫回転率と交叉比率で金額の適正値を見る
在庫数だけでなく、経営面から在庫の適正さを確認するには、在庫回転率と交叉比率を活用します。
在庫回転率とは、一定期間に在庫が何回入れ替わったかを示す指標です。「売上原価÷平均在庫金額」で求め、数値が高いほど、少ない在庫で効率よく商品を販売できていると判断できます。反対に数値が低い商品は、在庫を抱えすぎている可能性があります。
交叉比率は、「在庫回転率×粗利益率」で求める指標です。在庫がよく売れているかだけでなく、どれだけ利益を生んでいるかまで確認できます。たとえば、よく売れる商品でも利益率が低ければ、交叉比率は高くなりません。売れ行きと利益の両面から商品を評価できるのが特徴です。
金額ベースの適正在庫を考える場合は、「一定期間の売上原価÷目標とする在庫回転率」が一つの目安になります。たとえば、年間の売上原価が1,000万円で、目標在庫回転率を10回とする場合、平均在庫金額の目安は100万円です。
商品の数量だけでなく、在庫金額や利益への貢献度も確認すると、在庫を持ちすぎている商品や部門を見つけやすくなります。在庫回転率と交叉比率をあわせて確認し、在庫の量と金額の両面から適正化を進めましょう。
小売店が在庫適正化を進める方法
計算で目安が出たら、次は日々の運用に落とし込みます。商品の性格ごとに手のかけ方を変えるところから始められるため、取り組みやすい順に4つ紹介します。
- ABC分析で商品ごとの管理の強弱を決める
- 発注方式を商品特性に合わせて選び直す
- AIの需要予測で発注量を自動算出する
- 消費期限と値引きを連動させて売り切る
ABC分析で商品ごとの管理の強弱を決める
ABC分析とは、売上高や粗利益などへの貢献度によって、商品をA・B・Cの3つのグループに分ける方法です。重要度の高い商品と低い商品を分けることで、限られた人員でも効率よく在庫を管理できます。
たとえば、売上への貢献度が高いAランクの商品は、欠品による機会損失が大きいため、在庫数や発注時期をこまめに確認します。一方、貢献度の低いCランクの商品は、確認頻度を下げるなど管理の手間を抑えます。
すべての商品を同じ精度で管理すると、重要度の低い商品にも時間を取られてしまいます。ABC分析を使えば、重点的に管理する商品の明確化が可能です。
発注方式を商品特性に合わせて選び直す
発注方式は、商品の価格や需要の変動に合わせて使い分けましょう。
定期発注方式は、毎週や毎月など決めたタイミングで在庫を確認し、必要な数量を発注する方法です。発注のたびに数量を決める必要がありますが、売れ行きの変化に合わせて発注量を調整しやすい特徴があります。そのため、季節によって需要が変わる商品や、単価の高い商品などに向いています。
一方、定量発注方式は、在庫があらかじめ決めた水準まで減ったら、一定量を発注する方法です。発注量を毎回考える必要がないため、管理の手間を減らせます。需要が比較的安定している商品や、単価が低く数多く扱う商品に向いています。
すべての商品を一つの発注方式で管理するのではなく、需要の変動や商品単価に合わせて使い分けることで、欠品と過剰在庫の両方を抑えやすくなります。
AIの需要予測で発注量を自動算出する
商品数が多く、人の判断だけでは管理が難しい場合は、AIを使って需要を予測する方法もあります。
AIによる需要予測では、過去の販売実績に加え、曜日や天候、気温、特売予定などのデータを分析し、商品ごとの需要や発注推奨量を算出します。担当者の経験や勘だけに頼らず、データをもとに発注量を決められる点が特徴です。
とくに活用しやすいのが、日によって需要が変わりやすく、売れ残りによる廃棄も発生しやすい日配品や生鮮食品です。需要予測の精度を高めることで、欠品だけでなく、過剰発注や廃棄の削減も期待できます。
ただし、AIを導入すれば必ず適正在庫になるわけではありません。予測に使うデータの量や質によって精度が変わるため、導入後も実績との差を確認しながら調整する必要があります。
仕組みの詳細は、AI自動発注とは?仕組み・導入メリット・事例・システムの選び方をわかりやすく解説で解説しています。
消費期限と値引きを連動させて売り切る
在庫が余りそうな商品は、廃棄になる前に売り切る仕組みを整えましょう。とくに、消費期限が短い食品では、期限が近づいた商品を早めに見つけ、適切なタイミングで値引きすることが重要です。
在庫管理システムと消費期限の情報を連携すれば、値引きが必要な商品を自動で抽出できます。値引きシールの発行まで自動化できる仕組みもあり、担当者が売場を回って対象商品を探す手間を減らせます。
また、値引き幅を一律に決める必要はありません。過去の販売実績や残りの販売時間、在庫数などをもとに、値引き額を調整する方法もあります。早い段階で大幅に値下げすると粗利益が減るため、売れ行きを見ながら段階的に価格を下げることがポイントです。
過剰在庫を廃棄して処理するのではなく、期限までに売り切るために価格を調整する仕組みを作れば、廃棄ロスと粗利益の減少を抑えやすくなります。
在庫適正化にはB-LuckのAI需要予測型自動発注がおすすめ
在庫適正化を仕組みで進めるなら、弊社のAI需要予測型自動発注システムB-Luckをおすすめします。過去の販売実績をもとに需要を予測し、欠品と過剰在庫の起きにくい発注量を算出する仕組みです。季節や気温の変動、特売、目標ロス率を考慮した予測にも対応しています。
導入効果として、あるドラッグストアでは欠品率が45%、廃棄金額が40%改善しました。別のドラッグストアでは発注時間が93%削減され、食品スーパーでは発注時間90%削減と欠品率20%改善を同時に達成した実績です。
出典:B-Luck 導入効果
沖縄県で食品スーパーを展開する株式会社野嵩商会では、21店舗への導入により発注業務時間を約30%削減し、全店舗合計で月約900時間の業務削減を実現しました。賞味期限チェックや値引シールの機能と組み合わせれば、期限管理から値引きまでを一連の流れにできます。
在庫適正化に関するよくある質問
在庫適正化について、小売店の現場から寄せられることの多い疑問をまとめました。判断の材料としてお役立てください。
適正在庫と安全在庫はどう違いますか
安全在庫は欠品を防ぐための下限、適正在庫は欠品と過剰在庫の双方を防ぐ範囲です。安全在庫を計算しただけでは上限が決まらないため、余裕を上乗せするほど過剰在庫に近づきます。下限と上限をセットで決めるところから始めましょう。
生鮮や日配品にも安全在庫の計算式は使えますか
そのままの形では当てはめにくい商品です。安全在庫は在庫を保管して次の需要に備える考え方なので、翌日まで残せない商品では余裕分の在庫そのものがロスになります。日配品では、当日中に売り切れる量を基準に置き換えてみてください。
在庫回転率はどのくらいが目安ですか
明確な基準はなく、扱う商品や業界、企業規模によって変わります。食品のように消費期限のある商品を扱う小売店では、消費期限を回転率の基準と考えるのが一般的です。自社の過去の数値と比べて推移を追うほうが、他社との比較よりも役に立ちます。
AIを入れれば在庫は自動的に適正になりますか
発注量の算出は自動化できるものの、前提となるデータが正しくなければ結果もずれます。在庫数の精度を保つ運用と、例外的な商品を人が確認する体制は、AIの導入後も必要です。まずは在庫データの整備から着手してみてください。
まとめ
在庫適正化は、安全在庫という下限を計算するだけでは達成できません。上限もあわせて決め、商品ごとの性格に応じて管理の強弱をつけていく取り組みです。
小売店では、日配品や生鮮のように翌日まで残せない商品を扱う点が計算を難しくしています。欠品を恐れた上乗せや、システムと実物の在庫のずれも、適正化を遠ざける要因になります。まずは在庫数の精度を確かめるところから始めてみてください。
そのうえで発注量の算出をAIに任せれば、判断のぶれを抑えながら欠品と廃棄の両方を減らせます。人の勘に頼る在庫管理から仕組みで支える運用へ切り替え、欠品も廃棄も出にくい売場をかなえましょう。
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